SSブログ

Der Baader Meinhof Komplex [movie]

『おくりびと』が第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した2008年、
本作『バーダー・マインホフ 理想の果てに』もドイツ代表作としてノミネートされていた。
(同年、イスラエルのアニメ映画『戦場でワルツを』とポーランド映画『カティンの森』も
 外国語映画賞にノミネートされている。この4作に共通するテーマは”死”である。
 中でも受賞に至らなかった3作の、史実である”死”は壮烈かつ挑戦的で、生涯記憶に残るだろう)

『バーダー・マインホフ 理想の果てに』は1970年代の、
ドイツ赤軍10年間の闘争史を再現した映画であるが、現代の若者にも伝わりやすく、
アクション満載で制作費に30億円投入されている大作だ。
史実に忠実に再現されているが分析的要素は排除され、判断は観客に委ねられるつくりとなっている。

私がドイツ赤軍(とくにウルリケ・マインホフ)について知るきっかけとなったのは、
ドイツ現代画家ゲルハルト・リヒターの絵画である。
リヒターの絵画の中でもとりわけ重要な連作『1977年10月18日』(1988年発表)には、
テロリストたちの”独房”と”死”がモノクロームで描かれてある。
(私はその絵を写真でしか見たことないのだが、ある種の精神状態において、
 視覚的に不思議な体験と、味わったことのない感情を覚え、芸術の本質を見たような気がした。
 比較的小さな作品で構成されている連作とのことだが、原画はおそらくもっと強烈だろう)
リヒター自身は共産主義者ではないし、イデオロギーに拒絶的だ(私もそうだが)。
連作についてリヒターは、「(左も含めた)イデオロギー的態度全般の犠牲者である彼らへの哀悼」
「ドイツ赤軍事件を風化させずに、新たな意味を模索する芸術的試み」であることに言及している。
(連作を取り組むにあたっては、映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』の原作者、
 シュテファン・アウストの著書(同タイトル)を参考にしたとのことだ)

そして、インタビューの中でリヒターはこう答える。

(あなたにとってドイツ赤軍とは、なによりも女性の行動ですね)

「そのとうりです。そこでは、女性たちが重要な役割を果たしたとも考えていますし、
 彼女たちは、男たちよりもずっと強い印象を私にあたえました」 (写真論/絵画論より)  


バーダー・マインホフ 理想の果てに [DVD]

バーダー・マインホフ 理想の果てに [DVD]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



Facebook コメント

untitled #2712010-09-12 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。